超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

グルル

 彼女と別れ話をするのに公園を、しかも繁みの近くのベンチを選んだのは失敗だった。
 真剣な話をしている最中ずっと、彼女が耳の中で飼っているキリンが首を伸ばし、繁みの葉っぱをむしゃむしゃ食っていたせいで雰囲気が台無しだったのだ。
 そもそもあいつが俺になつかなかったことが原因で関係がぎくしゃくし始めたのに。
 憤る俺の鼻の奥で、ライオンが申し訳なさそうにグルル、と唸った。