超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

四月の夜の夢

 私がまだ若かった頃、当時勤めていた幼稚園に泥棒が入ったことがあった。
 ちょうどその前日に月謝を集めて金庫に入れたばかりだったので、関係者総出で盗まれたものを調べたのだが、何度確認しても、盗まれたのは園児たちが描いた家族の絵だけだった。
 色々な感情の入り混じった沈黙の中、パトカーの赤色灯だけがせわしなく光り続けていた。