超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

胎動の日

 ある夜、帰路を急いでいると、町で一番大きな交差点に大勢の男女が寝そべっていた。
 皆でアスファルトに耳をつけて、「あ、動いた」「動いたね」と口々に言いながら微笑み合っている。
 音を立てぬようそっと横を通り過ぎた時、街灯の光に照らされた彼らが、寸分違わず同じ顔をしていることに気がついた。