2017-12-13 エッグ クミコからきいた話 明け方頃、壁に張り付いていた繭の内の一つが割れた。 中から現れた湿った小指は、ぽとりと小さな音を立てて床に落ちた。 右手の小指だ。 慎重に拾い上げてケースに納める。 これでやっと両方の掌が揃った。 しかしまだまだ先は長い。 分娩室いっぱいに張り付いた大量の繭を前に、僕は「妻」の細い腰をぎゅっと抱き寄せた。