超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

星に願いを

 仕事でヘマをやらかし、彼氏には浮気され、挙げ句帰りの電車で痴漢に遭った。
 へとへとに疲れた体でワンルームマンションのドアを開け、玄関にへたりこむ。
 何だかとても悲しくなってきて、思い切り声を上げて泣こうとした。
 しかし、涙が出てこない。
 はっと思い出す。
 利用料金を滞納しているせいで、涙腺が閉じたままなのだ。
 ああ、もう、情けない。
 バッグの中の目薬をさし、立ち上がる気力もなく、玄関に座りこんだままキッチンの窓から夜空を見上げる。
 今夜も冬空一面に、役所がレンタルしている星々が瞬いている。
 ああ、もう……金がほしい。