2017-11-27 皮と風 マリコからきいた話 ほとんど食べ残された私の皮が、すっかり萎んで流し台に捨てられている。 同じ家にいるはずなのに、もう三ヶ月も彼と顔を合わせていない。 今日も私は出来たばかりの皮を剥ぎ、彼の使っているお箸を添えて、彼の部屋の前にそっと置く。 物音一つしない家の中は、一人でいた時よりもずっと静かで寂しい。 そろそろ公園から人がいなくなる時間帯だ。 出かける支度をして、後ろ手に玄関のドアを閉め、新しい皮を作るために、木漏れ日を浴びに行く。 剥き出しの肉に、夏の風が心地好い。