超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

帰国

 友人から外国旅行のお土産に缶詰をもらった。
 外国で買ってきたという割にはやけに和風なデザインのラベルが貼られていたが、まあ、そういうものもあるのだろうと思った程度で、特に気にしなかった。
 中身はたぶん魚か何かの肉でそれなりに美味しかったのだが、食べ終えた直後から、何だか腹の中がざわざわする感じに襲われた。
 変なものでも入っていたんじゃないかと不安になり、缶のラベルを読もうとした時、缶の内側に、何かで引っかいた「正」の字がびっしり残されていることに気がついた。