超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

新世界より

 靴を揃え、遺書を置き、未練を捨て、マンションの屋上から身を投げた瞬間、なぜか体がふわりと浮かび上がった。
 叩きつけられる予定だったコンクリートが視界の先遥か遠くで、波間に漂う板のように頼りなく揺れている。
 わけもわからず呆然としていると、ふいに背後に気配を感じた。
 身体を無理矢理ねじって屋上の方を振り返ると、夕暮れの空に宇宙服を着た男たちが浮かんでいて、俺の書いた遺書を興味深そうに読んでいた。