超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

一握の砂

 ふたりしっかりと手をつないで歩いていたはずなのに、私の部屋の前に辿りついた時には、既に彼は私の手の中で一握りの砂になってしまっていた。
 初めて本当に好きになった人だったんだけれど、神様は許してくれなかったみたいだ。
 砂粒が少し湿っている。
 私の手汗かな。
 いや、彼の涙だと思うことにしよう。