2017-09-16 髪と陽 クミコからきいた話 もう死んでやる、といつもの調子でつぶやいて彼女はビルの階段をのぼっていった。 うだるような暑さの中、僕は心身ともに疲れ果て、彼女を追いかける気力もなく、ただぼんやりと足元の影を見つめていた。 どのくらいの時間が経っただろうか、蝉の声がふいに途絶え、辺りが静けさに包まれた時、僕の頭上からジュッ、と何かが燃えるような音が聞こえてきた。 ふと見上げると、真っ赤に燃える太陽の向こうから、女の髪の毛が焼けるにおいがじんわりと漂ってきた。 足元の影がぞわぞわと蠢いたような気がした。