超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

カボチャ

 ゆでた掌をザルに上げた瞬間、風呂上がりを連想してビールを飲みたくなった。
 何でだろう。お酒なんて一滴も飲めないのに。
 一度だけ飲んだことはあるんだけど、気持ち悪くなるばかりでちっとも酔えなかったから、それ以来お酒は飲んでいない。
 もちろんビールも。
 でも、テレビとかで観る風呂上がりのビールってやつは美味しそうな感じがする。
 あれは飲んでみたい。どんな味がするんだろう。私の舌でも美味しいのかな。
 ……この人はお酒とか飲めたのかな。
 ほかほかと湯気をたてる掌を菜箸でつつきながら思う。
 私がもしお酒飲めて、楽しい気分になって、嫌なことを忘れられる人間だったら、こんなことにはならなかったのかな。
 関係ないか。わかんないな。ああ、わかんなくなってきた。
 カボチャ潰そう。