超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

笑う剥製

 夫に浮気がバレそうな予感がしてきたので、面倒なことになる前に浮気相手を剥製にして、クローゼットの奥に隠すことにした。
 表情やポーズは私が好きに決めていいと彼が言ってくれたので、彼の笑顔が好きだから剥製も笑顔にしてみたのだが、最近そのことをちょっと後悔し始めている。
 やっぱり、クローゼットを開けるたびに、闇の奥に笑顔がぼんやり浮かぶのはどこか気味が悪い。
 次は普通の表情にしようと思う。
 まぁ、浮気がバレないようにするのが一番いいんだけど、それはそれってことで。