超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

西日

 窓から差し込む西日を何気なく指でつまんだら、案外あっさり剥がれてしまった。
 窓の形に剥がれた西日をひらひらさせながら、何か良い使い道はないかとあれこれ考えてみたが、俺の頭では何も思いつかなかった。
 一瞬、そういえばトイレットペーパーが切れかかっていたな、と頭をよぎったが、その案はすぐに却下した。
 結局、西日は近所の川に投げ捨てた。
 ジュッ、と音を立てて西日は消え、俺の指先には何か埃っぽいにおいが残された。