超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

ラバーズ

 さよなら、愛しているよ。

 真っ二つに切られる直前、トマトは確かにそう叫んだ。
 べとべとになった手を洗い、冷蔵庫を開けると、レタスときゅうりがほのかに赤く色づいていた。

 野菜室の中で何があったか知らないが、今日の夕方こいつらを八百屋で買ったとき、店のオヤジがほっとしたような顔をしていたのをふと思い出した。

 いつもより少しイライラしながら一人分のサラダを作り、念入りに噛み砕く。
 早くうんこになってくれないかなと、思っている。