超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

チョコレートで出来た友達が

チョコレートで出来た友達が
軒下で夜を待っている夕暮時
野鼠に齧られた鼻の頭を気にしながら君は、
チカチカ光りはじめたエッチなお店のネオンを見つめている。

チョコレートで出来た友達が夜を待ちながら
軒下で歌を口ずさんでいる夕暮時
君の喉の奥に居座るざらざらした砂糖の塊は、
小さかった頃の私の料理下手のせいだ。

君の背中に照りつける西陽の光は、
むせかえるような甘い香りを街の隅に漂わせ、
眠りはじめた野鼠たちは夢の中で砂糖壷に溺れる。

明るいキッチンに立ち人間の友達のために鍋をかき混ぜながら、
洗濯機の渦を眺めるのが好きだった君の、
か細い鼻歌を今さら思い出している。