明け方頃の町の空に、大きな子どもが寝そべって、眠たげな顔で面倒くさそうに、傍らに置いた藤の籠から、スズメを一掴み二掴み、町の電線にばら撒いていた。
スズメたちはどれも標本みたいに、ピクリとも動かなかったが、電線にばら撒かれた彼ら彼女らは、上下も左右もバラバラで、何だかちょっと不憫だった。
大きな子どもが籠を逆さにして、伸びやかなあくびを一つした時、どこからか大きな母親がやってきて、彼の頭を引っぱたいた。
大きな子どもは泣きじゃくりながら、何やら母親に抗議していたが、大きな母親は聞き入れず、もう一度子どもを引っぱたいた。
大きな子どもは観念した様子で、涙を拭いながら、電線のスズメたちの向きを、一つ一つ揃えていった。
……あれ、
あの細い指、
あの長い睫毛、
あれは幼稚園の時に亡くなった、隣の家の……。
私がそんなことを考えた時、ちょうど町に朝日が昇った。
大きな母親が慌ててすっ飛んできて、手際よくスズメの向きをパッパと揃えた。
何となく不満そうな子どもの横で、母親がパチンと指を鳴らした。
電線のスズメたちが一斉に鳴き出し、二人の姿は町の空に溶けるように消えてしまった。