超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

ロボットと人間

 青のロボットは海底で骨だけになり、魚たちの棲み処である空っぽの頭で、
 さざなみの下日々、路傍に打ち捨てられた恋人のことを思い出している。
 赤のロボットはバラバラになり、爽やかな風の吹くゴミ捨て場で、
 桜の花びらに埋もれながら、六個の瞳で見つめ合った恋人のことを思い出している。

 どこか遠くで人間の、女がむせび泣いている。
 エイが翼をはためかせ、天使のように通りすぎる。
 どこか遠くで人間の、男が受話器を叩きつける。
 叡智の光のまっすぐな道を、ゴミ収集車がやってくる。