超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

抜け殻

 部屋の隅に抜け殻を残して、恋人が去ってしまった。

 カサカサの恋人の抜け殻を、そっと壁に立てかけた。

 夜までぼんやりと空を眺め、爪を切り、そうしたらもうすることがなくなったので、一人布団に潜り、抜け殻を眺めながら眠ることにした。

 抜け殻の足の方にかすかに溜まった恋人の声が、寝入りばなの耳にさびしく聴こえる。