超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

 昔住んでいた家の庭の隅には、私が幼い頃に亡くなった老犬の墓があった。祖母と私で作った手作りの質素な墓で、私は毎朝線香をあげ、墓の周りを掃除していた。

 ある朝いつものように墓の前に行くと、墓碑が倒れ、土が掘り返されていた。カラスか何かのイタズラかもしれないと思い、家族を呼びに家の中に戻ろうとした時、耳元で誰かのゲップの音が聞こえた。

 そういうことがあった。

 あの家の思い出はその場面で途切れている。