超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

鏡と湯気

 新しい鏡を買った。何の変哲もない姿見だ。さっそく部屋に飾ってみる。悪くない。しかし何だか曇っているように見える。鏡を磨いても変わらない。

 よくよく目をこらすと、鏡の中の私の背後から、湯気のようなものが立ちのぼっていることに気がついた。あれのせいで曇っているように見えるのだ。

 体をずらして湯気の方に目をやると、鏡の中の部屋の隅に、見たこともない調理器具が置かれていて、その中で何か白い肉のようなものが蒸されていた。鏡の中の私は額にぐっしょりと汗をかいていた。