妹の唇をこじ開ける。
中を覗く。
舌のない妹の口の中を、妹の舌の幽霊がうろうろしているのが見える。
私は蜂蜜の瓶の蓋を開ける。
スプーンを取り出す。
蜂蜜をすくう。一さじ。一さじで充分だからだ。
私は舌のない妹の口の中に、蜂蜜を流し込む。
妹の舌の幽霊がはっとして立ち止まるのが見える。
舌のない妹の口の中を、妹の舌の幽霊の足元を、蜂蜜は老いた蛇のように、ゆっくりと喉の奥へと流れ落ちていく。
妹の舌の幽霊は、うつむいて、ただじっとその様子を眺めている。
私はそれを見つめている。一日でいちばん静かな時間だ。