超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

妻水

 妻はある朝、水になりました。そしてその日から浴槽の底で、ゆらゆらと揺れています。

 

 妻が突然水になり、私の生活は寂しくなりました。

 妻が好きだったバナナを浴槽の底に沈めると、水になった妻は嬉しそうにぬるみます。

 そのことが余計に私を寂しくさせます。

 

 この寂しさを紛らわそうとして、一度金魚を飼おうと思い立ちました。しかし、ふと思うところあって、私は買ってきた綺麗な金魚を、水になった妻の中に放してみたら、案の定、数分後に死んでしまいました。

 実は、妻にそのことを話して「女心がわかってないよ」と笑ってもらおうとしたのです。しかし、妻は水になっているのでした。