トモコとマリコ

超短編を中心とした短い読み物を発表しています。

丘といびつな風

 丘の向こうへ食べ物を取りに行った夫は、丘のてっぺんで知らない女と出会い、そのまま丘のてっぺんに家を建て、二人はそこで暮らし始めた。残された私は飢えて死んだ。

 二人の建てた家は丘の空気の流れを変え、丘から降りてくる風はいびつな形になった。そのいびつな風に晒されながら土に還ろうとしている私もまた、いびつな形に干からびていった。

 

 様々ないびつな形を経て、私の体は最近、どこかの国の文字に似てきた。どこの国かは知らないが、昔観た映画の市場のシーンで、私そっくりの文字が看板に書かれていたのを覚えている。あの市場では何が売られていたのか、それが少し気になるが今となっては知る術もない。

 

 いびつな風は今も毎日、少しずつ私の体を折り曲げ、削り取っている。来年の今頃私は、また別の文字になっていることだろう。

 丘のてっぺんからは私が読めるのだろうか。もし読めるなら壁の隅にでもメモしておいてほしい。偶然短い詩でも出来れば、二人の話の種くらいにはなるんじゃないかな。

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