2014-05-20 傷と階段 クミコからきいた話 道で転んで、膝を深く擦りむいた。 薄桃色の肉の表面には、四角い蓋がついていた。 蓋を開けると、下り階段が現れた。階段の先には、濃い闇が湛えられていた。 夕暮れの陽ざしが、むき出しの肉を照らし、ぴりぴりと痛んだ。夕暮れの風が、階段の中に吸い込まれて、ごうごうと鳴っていた。 やがて肉から滲み出てきた血が、階段を流れ落ちていった。それと入れ違いに、誰かが階段を昇ってくる足音が聞こえてきた。すぐに蓋を閉めて、家に帰り、絆創膏を貼って、寝た。