超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

傷と階段

 道で転んで、膝を深く擦りむいた。

 薄桃色の肉の表面には、四角い蓋がついていた。

 蓋を開けると、下り階段が現れた。階段の先には、濃い闇が湛えられていた。

 夕暮れの陽ざしが、むき出しの肉を照らし、ぴりぴりと痛んだ。夕暮れの風が、階段の中に吸い込まれて、ごうごうと鳴っていた。

 やがて肉から滲み出てきた血が、階段を流れ落ちていった。それと入れ違いに、誰かが階段を昇ってくる足音が聞こえてきた。すぐに蓋を閉めて、家に帰り、絆創膏を貼って、寝た。