超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

水と樹

 しんと澄んだコップの水面に、大きな樹が映っていた。

 私は指先でこつりと、コップをつついた。

 しんとした水面が、音もなく揺れた。水面に映った大きな樹も揺れ、色濃く繁った葉の間から、小さな鳥がとび出した。

 するととつぜんコップの底から、鋭い銃声が発せられ、鳥は小さな叫びとともに、まっ逆さまに落ちていった。

 水面は再びしんとして、私の指先はかすかに、痺れていた。