(一)
庭で苺の詩を摘んだ。
ジャムにした。不味かった。
私の庭には、本物の苺はまだ一度も実ったことがない。うんざりしている。
(二)
金魚鉢に、小さな浮き輪と、小さな靴が浮いていた。金魚はその日かなりの量の餌を残した。
しかし金魚はしれっとした顔をしているし、元気そうなので、とりあえず忘れることにした。
(三)
水族館の、いちばんおおきな水槽の、底の底の底の、隅っこに、布団が敷いてあって、掛け布団の下には何かいるらしく、もっこりもぞもぞしている。
布団の周りには、蝿が飛び回っていて、そうなるとあの何かは、死んでいるのかもしれない。
そうすると、もぞもぞしているのは、目の錯覚なのかもしれない。
(四)
雨の路地で、小さな肉片を拾った。薄桃色の湿った塊だ。
拾い上げて、掌の上で軽く転がしているうち、すっかりなつかれてしまった。
持ち帰って机の上で飼うことにした。
ミルクを温めながら、耳掻きのぼわぼわしたやつで撫でていると、この小さな肉片は、様々な声で鳴くことがわかった。友だちができた気持ちだった。
嬉しくなって、観察日記をつけることにした。ノートの最初のページには、この小さな肉片は、放っておくと、庭の花壇や花瓶の中で、気持ちよさそうに花にくるまれて寝ているので、この小さな肉片は、たぶん元は鼻だったんだろうと、思う。と書いた。