超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

骨とはつ恋

 台所に飾られている首の長い花瓶には、何のものかわからない尖った一本の骨が活けられている。

 骨は母が活けたもので、骨はかすかに桃色がかっていて、骨は母と仲が良い。

 母は家事が一段落すると、骨と指先で戯れる。花瓶のガラスの曲線に沿って骨は、キンキンと鋭い音を立てながら、新鮮な水をかきまぜる。

 ときどき、尖った骨の先が、母の指に刺さり僅かな血が流れる。

 その血を舐め取るとき、母の顔は、はつ恋の日に戻る。