トモコとマリコ

超短編を中心とした短い読み物を発表しています。

黴と沈黙

 その鯨は、一人ぼっちで生まれて、一人ぼっちで暮らしていたので、それを見てたくさんの船乗りが、鯨の物語を作った。

 あるとき鯨は、さびしくなって、陸に上がったが、村の灯りを見つけたところで、力尽きてしまった。それを聞きつけて、たくさんの旅人が、鯨の詩をこしらえた。

 年月が経ち、死んだ鯨を、苔と黴と砂が覆って、やがて鯨の体は、小さな山になった。

 何の変哲もない山なので、誰も見向きもしなかったが、時々子供たちなどがのぼって遊んだ。

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