超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

暗がりと果実

 叔父夫婦の家には二階の突き当たりに部屋があって、そこからいつも甘い香りが漂っていた。

 叔父夫婦には子がおらず、遊びに行くとその分私を可愛がってくれていたが、その部屋のことを尋ねると、必ず話をはぐらかされた。

 ある日叔父夫婦の家に泊まりに行き、いつものように多すぎる夕食を平らげ、いつものように長すぎる風呂に入り、ぐっすり眠っていたのだが、夜中にトイレに起きてしまった。

 寝ぼけ眼で用を足しているとき、ふと二階の部屋のことを思い出した。叔父夫婦にばれないように慎重に階段を上り、突き当たりの部屋の戸を開けると、人の背丈ほどもある巨大な果実が、月明かりに照らされて、湿った布団の上に転がっていた。

 甘い香りが凄まじい勢いで、廊下に向かって流れ込んでくる。慌てて部屋に入り後ろ手で戸を閉め、果実と二人きりになった。落ち着いて暗がりに目をこらし、果実をじっと見つめていると、段々と巨大な果実に誘惑されているような感覚をおぼえた。

 おそるおそる果実に歯を立てると、皮は驚くほど柔らかく、果肉はあまりにも瑞々しかった。

 夢中で食べ進めていくうちに、果実の芯が見えてきた。

 少しくびれた芯の上部には、女の胸の膨らみがあった。