超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

瞳と視線

 僕の牢にあてがわれたのは、顔のない看守だった。

 一日中つるんとした顔を僕に向けて、マジックペンで、僕を監視するための目を描いている。

 一日中というのは、どうやらインクと顔の素材の相性が良くないらしく、描いたそばから、目が消えていってしまうからだ。

 実際は「目」なんて立派なものじゃなく、ただ単にぐじゃぐじゃっと描かれた、出来損ないの黒い丸なのだが、僕が殺した奴の目に似ている気がする。