超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

レインコートとペニー・レーン

 朝、寝ぼけ眼で冷蔵庫の扉を開けると、冷蔵庫の中に大雨が降っていた。

 詰め込まれた野菜と果物の上に、水玉模様のレインコートと長靴が放られている。立ち並ぶ調味料の間には、何だかお洒落な街灯が生えていて、泡立つ水たまりに光の粒が反射していた。

 キッチンからトーストの焼きあがる匂いが漂ってきたので、バターの箱を取り出してみると、箱の中から、鼻歌のペニー・レーンと漫画本をめくる音が聞こえた。

 トーストは焼けてしまったが、仕方ないので何も付けずに平らげた。