線路の真ん中で寝ていると、彼女がやってきて、私に声をかける。
寝転んだまま、目を開けると、適度に雲をちりばめた、適度に青い空に縁取られた、彼女の顔が、私を覗きこんでいた。
彼女の瞳はひどくけだるく、小さな耳は、言葉に削られてささくれていた。
私は身を起こし、視界全部に彼女を満たした。
彼女はスカートを脱ぐと、闘牛士のようにそれを構え、五月の空に向かって、ぱたぱたとはためかせた。
すると浮かぶ雲の表面が、ぽろぽろと剥がれ、雲の形に組み合わさった、小さな歯車の塊が現れた。
彼女は、全部インチキなのよ、と風に溶かすようにささやくと、私の隣に腰掛けた。
あとは列車が私たちを轢き潰すまで、私は彼女の、彼女は私の、吐息を反芻して過ごした。