超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

照準と茶碗

 まだ幼かった頃、二つ上の兄貴がご飯を食べていたお茶碗にはファンシーなライオンのイラストが、僕がご飯を食べていたお茶碗にはポップな車のイラストがそれぞれ描かれていた。
 ある日の夕飯の時間、兄貴が何でもない話をしながらしきりに僕の手元をちらちらと見るので、何か違和感を感じてふと自分のお茶碗を見ると、僕のお茶碗の車の窓が薄く開き、そこからライフルの銃口がのぞいていて、兄貴のお茶碗のライオンの眉間にじっと照準を合わせていた。