超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

夜と鳴き声

 夕食の用意をしている時、何かの鳴き声が聞こえた。狡猾な動物、卑屈なロボット、そんなものをイメージさせる不快な音だ。今夜は好物のカレーなのにテンションが下がる。コンロの火を止めて耳を澄ませてみるが、鳴き声の出所がちっとも見当がつかない。遠くから響いているようにも思うし、私のすぐ近くに声の主がいるような気もする。不気味だ。早く飯を食って眠ることにした。カレーを皿に盛り、スプーンを持ったとき、その銀色の曲面に、口をすぼめてぎいぎいと鳴く私の顔が映っていた。