超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

吸殻と予感

 小さな女に火を点けて、今日の嫌なことを色々と思い出しながら、女の煙を吸い込み、肺を満たす。体によくないと妻に言われるが、ストレスをため込んだままいる方がよっぽど体によくないと思う。勝手な理屈だが、こればっかりはやめられない。少し落ち着いてソファに深く腰掛けると、指に挟んだ小さな女がもう萎れていた。この女はよくない女だ。吸い殻をジンジャーエールの空き缶に捨てる。次の女を袋から取り出したところで妙な音がした。空き缶の中からだ。携帯のカメラのライトを灯し、中を覗くと、小さな女と小さな男の、それぞれ吸われ残った部分同士が、ぎこちない性交に励んでいた。しかし私には、小さな男を吸う趣味はない。今日は妻の帰りが遅い。冷たいものが胸の底を流れた。