トモコとマリコ

超短編を中心とした短い読み物を発表しています。

詩とやかん

 一所懸命に書いた詩だったが、台所で湯が沸いて、やかんの音がピーッと響くと、それに驚いて文字たちがノートから逃げ出してしまった。真っ白に戻ったノートのページには、私の手のあぶらの跡だけが残っていた。夏の晩のことで、いっそ裸で寝てしまおうと思ったが、風邪をひくのが怖かったので、結局厚着をして寝た。

 一所懸命に書いた詩だったが、出来がいまいちだったので、ゴミ箱のアイコンに投げ込んだ。しばらくすると、アイコンの下に、何か汁のようなものが滲んできた。慌ててアイコンを移動させると、勢いがよすぎたのか、汁のようなものは画面じゅうに飛び散り、そのシミはいつまでも消えなかった。
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