超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

ポストと朝食

 彼がポストに新聞を入れようとすると、ポストの口からフォークとナイフが彼に向かって突き出してきた。間一髪のところで避けると、フォークとナイフはしずしずとポストの中に戻っていった。彼は思わず腋に鼻をこすりつけ、自分のにおいを嗅いだが、やにとインクのにおいしかしなかったので一安心し、とりあえず新聞をポストの足元に置いてその場を去った。しばらくして遠くから、カリンカリンという音が響いてきた。今まで鳥の鳴き声か何かだと思っていたが、あれはフォークとナイフがぶつかる音だったらしい。