超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

更衣室とカンガルー

 一時間目がプールだったので、更衣室に向かった。早く着きすぎて僕しかいなかった。
 着替えていたら、隣の女子更衣室がざわざわしてきた。女子が来て着替えているらしい。男子はどうしたのかと思いながら水着に足を通したところで、更衣室の壁に、小さな穴が開いていることに気がついた。
 隣では女子が着替えている。僕はおそるおそる穴を覗いた。
 更衣室の中では、クラスの女子の面影を残したカンガルーたちが跳ねていた。お腹のポケットにはクラスの男子が一人二人入れられて、カンガルーが跳ねるたびにきゃっきゃと騒いでいる。僕は男子がカンガルーくらいで騒ぐのは子供っぽいと思ったし、女子がカンガルーになっているのも何となくいやらしいと思ったが、更衣室のどこを探しても僕の姿は見当たらなかったので、穴をガムで塞いでプールに向かった。
 廊下は静かで、僕の唇は乾いていた。歩いているうちに窓の外が少し曇ってきたので、プールの授業は中止になるかもしれなかった。