超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

あぶくと長い長い夜

 眠れない夜に、天井を眺めながら、部屋が柔らかい液体で満たされるイメージを浮かべる。その底に寝転んで、私の鼻から出るあぶくを見つめていると、安心していつの間にか寝てしまっている。私の幼い頃からの癖というか、おまじないの一種みたいなものだ。
 嫌なことが続いて眠れそうになかったある晩、布団にもぐり、いつものように柔らかい液体で部屋を満たすと、部屋の隅に、私のものではないあぶくが立っていることに気づいた。そっと目を閉じて、震えながら朝を迎えた。
 困ったことに、次の日からまったく眠れなくなってしまった。仕方なく柔らかい液体のイメージを浮かべると、そのたびにあぶくは私に近づいている。