雨が上がったばかりの道を歩いていたら、影が水を吸ってぶよぶよになってしまった。
仕方なく一度家に戻ろうとした瞬間、膨らんだ影の先っぽを、かき揚げみたいな顔のおばさんが乗った自転車が踏みつけていった。
ぶしゅ、と音がして小さな穴が空き、影がどばっと道に流れ出た。慌てて影を手繰り寄せたが、残った影が底にわずかに溜まっているだけだった。
急に心細くなって、空を見上げた。雲はなく、太陽は照っていた。雨上がり特有の蒸し暑さが、辺りを包みはじめた。道に流れ出た分も、じきに蒸発して消えてしまうだろう。
燦燦と降り注ぐ陽の下で、私はなすすべもなく佇んでいた。