超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

新しい皮と古い皮

 恋人ができないのは顔のせいだと思い、整形手術を受けることにした。
「古い顔をまるごと剥ぎまして」
「ええ」
「その上に新しい顔を貼り付けます」
「合理的ですね」
「科学の勝利です」

 手術は見事成功し、美しく新しい顔が貼り付けられた。
「素晴らしい出来です」
「自分じゃないみたい」
「古い顔の皮はどうしますか?」
「記念に持ち帰ることって……」
「ええ、もちろんどうぞ」

 差し出されたデパートの紙袋を覗くと、古い顔の皮がきちんと折りたたまれて入っていた。家に帰って広げてみると、少しスナック菓子のにおいがした。