超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

保育器と記憶

 最初の記憶は、保育器のなかでシーツの皺の数をかぞえていたことです。
 次の記憶は、隣の保育器にいた女の子と目が合ったことです。
 3つめの記憶は、金色の獅子が保育器の間をのっしのっし歩いていたことです。
 4つめの記憶は、金色の獅子が隣の女の子のにおいを嗅ぎ、しかめっ面をしたあと、口にくわえて連れ去ってしまったことです。
 5つめの記憶は、家族の顔々々々。