超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

ヒトデと漁師

 死んでしまいたいと思いながら、砂浜を歩いていた。
 夕日を溶かした波のかたまりが海のあちこちで萌えていた。

 笑い声が聞こえた。
 ふと前を見ると、疲れた顔の漁師が砂の上にうつ伏せになり、ヒトデとジャンケンをしていた。長いあいこののち、漁師がグーで負けた。漁師はぷっと吹き出し、ひとしきり泣いて、何事もなかったかのようにジャンケンを再開した。

 誰も乗っていないバスが、私たちの横を通り過ぎていった。