自宅のアパートの階段に、見慣れぬ女が腰かけていた。
膝を抱えて、自分の足元をじっと見ている。外人みたいな目をした、むちむちした体の女だった。長いスカートと、ブルーのシャツ。ウェーブのかかった髪を後ろで縛っていた。化粧は薄く、肌の感じからすると、30代後半といったところだった。なかなかの美人だ。だがちょっと変わっていた。
アパートの階段は13段あるのだが、その全ての段に同じ女が13人腰かけていた。
私の部屋は2階にあり、階段の幅は人ひとり分しかない。女が退いてくれないと部屋に入れない。ましてや今日は夜勤がある。今のうちに眠っておきたい。
私は女に話しかけようとした。しかし、どの女に話しかければいいのだろうか。責任者は誰だ。やはり最上段にいる女か。それとも、最も手前にいる女か。ちょうど真ん中、7段目にいる女という可能性もある。
躊躇しているうちに雨が降ってきた。私は慌てて、アパートの1階の廊下に逃げ込んだ。女は相変わらずそこにいた。
廊下は変になまぬるく、私は眠くなってきた。雨は風を伴い、激しさを増す一方だった。女の服が透け、下着が見えた。上下とも紫色で揃えていた。
私は眠い頭で、
(派手だなぁ。)
と考えていた。