超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

竜巻とホテル

 アルバイトの帰り道、ラブホテル街を歩いていたら、自販機で小さな竜巻が売られていた。手のひらに乗るサイズで、1時間ほどで消滅してしまうらしい。

 次の日同じ道を通りかかると、中年のカップルが自販機で竜巻を買っていた。
 男が小銭を入れ、スイッチを押すと、コウコウ、という控えめな音とともに、取り出し口から小さな竜巻がおずおずと出てきた。
 男は毛だらけの指で竜巻のしっぽをつまみ、女の胸の谷間にねじ込んだ。女はキャアキャア笑っていた。二人はそのままラブホテルに入っていった。

 都会は怖いところだと思った。