超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

羽根と火の輪

 夕暮の児童公園に火の輪が佇んでいる。
 もう随分前にサーカスを追い出された、古ぼけた火の輪だ。
 ちろちろと切れの悪い小便のような火を身にまとい、かつてその身をくぐらせたライオンや虎の顔を思い出して、ぼんやりと日を潰す。
 藤棚の上で火の輪を睨む、羽根の端を焦がした鳩の恨めし気な瞳にはいつまで経っても気づかない。