超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

学び

 庭にナメクジがいた。
 本物のナメクジを見るのは初めてだった。
 ふと、あの話は本当なのだろうかと思い、興味本位で塩をかけてみると、次の瞬間、火花が散って黒煙が上がり、やがてモーターの焼ける臭いとともにナメクジは動かなくなった。
 予想外の最期だった。
 実際にやってみないとわからないことってあるんだな、と思った。

星に願いを

 仕事でヘマをやらかし、彼氏には浮気され、挙げ句帰りの電車で痴漢に遭った。
 へとへとに疲れた体でワンルームマンションのドアを開け、玄関にへたりこむ。
 何だかとても悲しくなってきて、思い切り声を上げて泣こうとした。
 しかし、涙が出てこない。
 はっと思い出す。
 利用料金を滞納しているせいで、涙腺が閉じたままなのだ。
 ああ、もう、情けない。
 バッグの中の目薬をさし、立ち上がる気力もなく、玄関に座りこんだままキッチンの窓から夜空を見上げる。
 今夜も冬空一面に、役所がレンタルしている星々が瞬いている。
 ああ、もう……金がほしい。

ゴッドファーザー

 小学生の時、同じクラスの××君が、遠足に死んだ金魚を持ってきた。
 その日行く予定だった高台の公園の、一番眺めのいい場所に埋めてあげたいのだという。
 冗談のつもりで「お弁当かと思った」と言ったら、びっくりするくらい怖い顔で「お前も殺すぞ」と言われた。