超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

ごちそうさま

 温めたコンビニ弁当を電子レンジから取り出そうとした瞬間、家のチャイムが鳴った。
 しぶしぶ玄関に行きドアを開けたが、そこには誰もいなかった。
 タイミングの悪い、しかも幼稚なイタズラに腹を立てつつ部屋に戻り、改めて電子レンジの扉を開けると、中から日傘を差したドレスの女が現れ、私に軽く会釈をしてそのまま部屋を出ていった。
 軽くなった弁当箱を電子レンジから取り出し、残っていたひじきを食ってふて寝した。

猫のゆりかご

 散歩中に通りかかった林道の外れから、小学生の集団がわいわい騒ぎながら現れた。
 それぞれが手に給食の余りらしきパンや牛乳を持っていたので、捨て猫でもいるのかと思い、林道の奥へ行ってみると、案の定落ち葉の上に段ボール箱が置かれていた。
 近づいて中を覗くと、細かく切断された女の死体の上に子猫がちょこんと座り、こちらを見上げていた。

ママはご機嫌

 クラスメートに笑われないようにと、お母さんは今日の遠足のお弁当にお肉をたくさん入れてくれた。
 甘辛い味付けのそのお肉はとても美味しかった。
 家に帰り、お母さんにありがとうと言いながら抱きつこうとしたけど、もうお母さんには抱きつけるところがなかった。

誕生

 公園をジョギング中、敷地の隅に枯れた花壇を見つけた。
 周りの花壇には鮮やかな花が咲き乱れているのに、その花壇一つだけが不自然に枯れ果てている。
 休憩がてらぼんやりと眺めていたら、花壇の土がもこもこと盛り上がって蠢きはじめた。
 モグラでもいるのかと思っていると、土の中からやたら肌つやのよい裸の少年が飛び出してきて、泣きながら走り去っていった。