2017-10-10 ごちそうさま トモコからきいた話 温めたコンビニ弁当を電子レンジから取り出そうとした瞬間、家のチャイムが鳴った。 しぶしぶ玄関に行きドアを開けたが、そこには誰もいなかった。 タイミングの悪い、しかも幼稚なイタズラに腹を立てつつ部屋に戻り、改めて電子レンジの扉を開けると、中から日傘を差したドレスの女が現れ、私に軽く会釈をしてそのまま部屋を出ていった。 軽くなった弁当箱を電子レンジから取り出し、残っていたひじきを食ってふて寝した。
2017-10-10 猫のゆりかご クミコからきいた話 散歩中に通りかかった林道の外れから、小学生の集団がわいわい騒ぎながら現れた。 それぞれが手に給食の余りらしきパンや牛乳を持っていたので、捨て猫でもいるのかと思い、林道の奥へ行ってみると、案の定落ち葉の上に段ボール箱が置かれていた。 近づいて中を覗くと、細かく切断された女の死体の上に子猫がちょこんと座り、こちらを見上げていた。
2017-10-08 ママはご機嫌 クミコからきいた話 クラスメートに笑われないようにと、お母さんは今日の遠足のお弁当にお肉をたくさん入れてくれた。 甘辛い味付けのそのお肉はとても美味しかった。 家に帰り、お母さんにありがとうと言いながら抱きつこうとしたけど、もうお母さんには抱きつけるところがなかった。
2017-10-07 誕生 トモコからきいた話 公園をジョギング中、敷地の隅に枯れた花壇を見つけた。 周りの花壇には鮮やかな花が咲き乱れているのに、その花壇一つだけが不自然に枯れ果てている。 休憩がてらぼんやりと眺めていたら、花壇の土がもこもこと盛り上がって蠢きはじめた。 モグラでもいるのかと思っていると、土の中からやたら肌つやのよい裸の少年が飛び出してきて、泣きながら走り去っていった。
2017-10-07 サンライズ・サンセット マリコからきいた話 歩道橋の階段をのぼりきる直前で、雪だるまはバランスを崩して粉々になった。 春の太陽が美しく見える場所で溶けていきたいと思っただけだった。