トモコとマリコ

超短編を中心とした短い読み物を発表しています。だいたい土曜日更新。

ライクアヴァージン

わざとらしい笑い声が響く団地の片隅で
母親がテレビのボリュームを上げた

雲の上でパパが歯磨きしてる
という娘のつぶやきをかき消すように

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スウィートドリームス

らぶゆー
と彼女は囁き
私の小指を飲み込んだ。

部屋の外では
年老いた見張り番が
古い映画の夢を見ている。

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月と葡萄

今日が終わり、
今日がまた来る。

ふと見上げた夜空には
満月がいくつもいくつも浮かんで
まるで葡萄の房のようだ。

また少し狭くなったベッドの中で
私が私の指に指を絡ませてくる。

また少し明るくなった月明かりから逃れるように
私が私の手から毛布を奪う。

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月になる

 夜中にこっそりベッドを抜け出し、夜空に寝そべり、黄色い毛布をすっぽりかぶり、満月のマネをしてふざけていた姉は、やがて夜の闇に少しずつかじられて、半月になり三日月になり、とうとう跡形もなく消えてしまった。
 次の日の朝、病院の人は、誰もいないベッドのシーツを換えながら、「たまにあるんだ、こういうこと」とため息をついていた。

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ラバーズ

 さよなら、愛しているよ。

 真っ二つに切られる直前、トマトは確かにそう叫んだ。
 べとべとになった手を洗い、冷蔵庫を開けると、レタスときゅうりがほのかに赤く色づいていた。

 野菜室の中で何があったか知らないが、今日の夕方こいつらを八百屋で買ったとき、店のオヤジがほっとしたような顔をしていたのをふと思い出した。

 いつもより少しイライラしながら一人分のサラダを作り、念入りに噛み砕く。
 早くうんこになってくれないかなと、思っている。

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