夕暮れ時、路地に伸びる自分の影が、いつもより濃いような気がした。
よく見ると、俺の影の中に、一回り小さい別の影が見えた。
俺の影に、影が生まれたようだった。それで濃く見えたのだ。
すると、俺はもうすぐ消えるらしい。俺の影が、次の俺になるために、その影が生まれたのだ。
急な話だ。何だかあっけない。俺の時もこうだったのかな。
俺もかつては俺の影だった。初めて全身に陽の光を浴びた時のじわっと感を、今でもよく覚えている。
いや、訂正。今さらになって思い出している。
影じゃなくなれば、楽しいことばかりだと思っていたけど、そうでもなかったな。
夕日が眩しい。
足下で影が膨らんでいく。
何か言った方がいいのかな。
影じゃなくなると、夜が心細いぞ。
だから早く友だち作れよ。
それじゃ。